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32件の着信は すべて兄からのもので 17通のメールはそのうち15通が兄からで あとの2通のうち、ひとつは美紀さんで、残りは若先生のからだった。 あたしは、松本さんと会った直後、気を失うようにパタリと座席に倒れ込んだらしく、ちょっと心配になった(車内での人の目もあって)松本さんがあたしの前のアパートに運んでくれたんだそう。 でも、あたしの家はもうそこではなくて。 そして、何よりあたしが目を覚まさなくて 仕方がないので松本さん曰く、セカンドハウスに運んで寝かせたらしい。 そんなご厚意にヒタヒタ浸りまくっていたあたしは 知らずとはいえ夜中まで眠りの中。 兄の心配も他所に。 あぁ、だから酔っ払いは! 大武先生が酔っ払いのあたしも見たい、だのなんだの言った事があったっけ? そんなストレートに言わなかった? まあ、いい、酔っ払いはロクな事がないですよ、なんて言ったのはあたし自身のはずなのに。 本当に自己嫌悪。 そして、更に。 兄は、若先生には一切連絡していない。 「吉川、心配すんだろ」 あたしが聞いたら兄はそう答えていた。 ますます罪悪感にどっぷり沈んで、再度謝罪を口にすると 兄はいつもの調子であたしに言った。 「門限、早くしますから!」 「…それはイヤ」 すかさず返したあたしの頭をポンポンと数回撫でて、夜もまだ明けないうちに仕事に出掛けていった。
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