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「山下先生、近い近い」
「えー、折原おねがーい」
シャンパンを3杯くらいきゅ~っと飲んで、この後、この有り様。
山下先生はあたしの肩を抱き、詰め寄ってきた。
アルコールが入ると途端にオッサン化してしまう質(たち)はやっぱり健在だった。
「わかりましたから、ちゃんと考えますからっ」
ぎゅーっと山下先生を押しやると一旦は離れた先生がグインと振り子のように戻ってきた。
「わぁ!」
勢いが強すぎて受け止めきれずにあたしの体はやむを得ず大森先生の方へ。
「痛…く、ない」
勢いよくぶつかった筈なのに痛くないのは何故?
そう思って目を開けると、上には切れ長の目が、あたしを見下ろしている。
あたし達の座るシートはソファーで一続きになっていて、大森先生があたしに向き直って受け止めてくれた、らしい。
「大丈夫ですか」
静かにそう言った大森先生。
「山下先生、先に起きて下さい」
「ごめんごめん折原~」
ケラケラと笑いながら、隣のナースさんに引き上げられる。
「す、すいません…」
「いいえ」
フ、と笑って受け止めていた手を外す。
そして頸動脈の辺りをスルリとなぞってあたしを起こした。
「!」
わ、わざとだ!
コイツ、わざとやりやがった!
なんだかさっきからちょっとずつ口が悪くなってる気がする…。
「ありがとうございました」
「山下先生も相変わらずですね」
「だから、ごめんってば大森」
お詫び、と言いながら山下先生はあたしのグラスにシャンパンを注いだ。
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