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そういえば。
ここに着いてから、まだちゃんと若先生の方を見ていない。
い、今更だけど…
ちょっと恐くて見られないって言う方が正しいっていうか…。
グラスを口に運ぼうとしたら、大森先生が話しかけてきた。
「折原さんは飲めるくち、なんですね」
「は、えぇまぁ、少しは」
「沫モノ、お好きですか」
「好きです」
そう言って、大森先生が先程から飲んでいるのはずっと烏龍茶。
「ひょっとして大森先生、この後仕事なんですか?」
「いえ」
「そうですか。烏龍茶だから、てっきり戻られるのかと」
大森先生のが持つ烏龍茶に目を向けながら言う。
「約束があるので。
申し訳ないのですが、控えさせて頂いてます」
「そうでしたか」
ココが終わってからの約束……。
なんて彼女に決まってるじゃない。
彼女付きの癖にあんな真似しやがって……。
と、イケナイ、やっぱり口調が乱暴に。
アハハ、と笑って自分で解決をしていると、大森先生があたしの耳元に顔を、正確に言えば唇を寄せてきた。
「精神的に乱れてきます」
「へ」
バッと体を離して大森先生を見ると、切れ長の目がキラリと光った。
……気がした。
「あ、やだー、大森先生、仲良しですね~」
声のした方に顔を向けると、あたしを閉め出した器械出しのナースさんが大森先生を指さして、若先生に撓垂れた(しなだれた)ところだった。
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