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そろそろお開きになるような 雰囲気に流れて。 あたしはテーブルを片付けてキッチンへ移動する。 楽しい雰囲気に 忘れていたけど 不意にさっきの若先生との電話での事を思い出して また急速に逸る鼓動。 耳に残る 低い音に 身体が 熱くなった。 「蜜、終わった?」 「へ」 シンクに跳ねた水滴を拭いているとちょうど今、頭の中で再生されていた音と実際に聞いた音がシンクロして、ドン、と一際大きく打つ鼓動に、全身が総毛立つ。 「あ、ちょっと待って下さい」 今、お水溢しちゃって、 と、溢してもいない水を拭くためにスッとしゃがんで床を拭く。 はは、顔が熱い…… 深呼吸を何度か繰り返して また立ち上がり布巾の水を搾ってまたしゃがむ。 だけどずっとこうしては居られない。 あたしは覚悟を決めてちょうどいい頃合いだろうと思うところで立ち上がった。 あたしの演技も捨てたもんじゃない。 「終わりました」 平常心を総動員して ニコリと微笑んだ。 「折原先生、蜜、連れて行きます。宜しいですか」 若先生のストレートなセリフに ガバッと顔をあげる兄。 「……宜しくない、に決まってんだろ」 そしてチラリとあたしを見る。 それがなんだか寂しそうに見えたのは気のせいか。 「って、言ってもどうせ行くんだろうから、早く連れてけ」 シッシ、と片手をあげて追い払うような動きを見せた後、兄はテレビをつけてニュースを流した。
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