2161人が本棚に入れています
本棚に追加
オペに入ってすぐ
多少の動揺はあったものの
目の前に立つ飄々とした男に威嚇?され続けた事と
隣に立って執刀する男の手技に
味気無さを感じてしまった事が
あたしをやけに冷静にさせた。
若先生はやっぱり度肝を抜くピカイチのオペセンスがあって
まぁ、外科と心外では違いはあるが……、にしてもなんだかとても興醒めしてしまった事は否めない。
お陰で、あたしの中で少しは和らいだなんともいえない蟠り(わだかまり)。
目の前で立つ、前立ちドクターの切れのいい介助が
隣の執刀医よりも興味があった事実も
これまた否めない。
確か、明後日は大森先生の執刀オペがあったなぁ。
そんな風に考えて
不意にさっきの事を思い出す。
そしてなんともうまいタイミングで大森先生と目が合った。
マスクで顔の大部分が覆われていて良かった。
顔が火照っていくのが分かるから、それがまた余計に火照りを加速させる。
目を合わせたまま
鉗子を手渡した。
大森先生は鉗子を受け取ると
直ぐに術野に目を落として
何かを言いかけたが、それよりも早く、あたしはガーゼを術野に差し入れた。
それから
オペは予定通りの時間で進み
何事もなく、無事に終了する。
あたしは、他のナース達と一緒にオペ室を片付けて、退室した。
最初のコメントを投稿しよう!