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オペに入ってすぐ 多少の動揺はあったものの 目の前に立つ飄々とした男に威嚇?され続けた事と 隣に立って執刀する男の手技に 味気無さを感じてしまった事が あたしをやけに冷静にさせた。 若先生はやっぱり度肝を抜くピカイチのオペセンスがあって まぁ、外科と心外では違いはあるが……、にしてもなんだかとても興醒めしてしまった事は否めない。 お陰で、あたしの中で少しは和らいだなんともいえない蟠り(わだかまり)。 目の前で立つ、前立ちドクターの切れのいい介助が 隣の執刀医よりも興味があった事実も これまた否めない。 確か、明後日は大森先生の執刀オペがあったなぁ。 そんな風に考えて 不意にさっきの事を思い出す。 そしてなんともうまいタイミングで大森先生と目が合った。 マスクで顔の大部分が覆われていて良かった。 顔が火照っていくのが分かるから、それがまた余計に火照りを加速させる。 目を合わせたまま 鉗子を手渡した。 大森先生は鉗子を受け取ると 直ぐに術野に目を落として 何かを言いかけたが、それよりも早く、あたしはガーゼを術野に差し入れた。 それから オペは予定通りの時間で進み 何事もなく、無事に終了する。 あたしは、他のナース達と一緒にオペ室を片付けて、退室した。
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