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その夜は とても静かな夜で 鳴り響くはずのナースコールも少なく 固定のラウンドと、処置だけで夜勤が過ぎていく。 救急で運ばれてくる患者も オペに至る迄でもなく こんな事は一年に二回くらいあればいい方だ。 あたしの勤務は 少し変わっていて オペ部所属の、ER班。 初めて、面接?と呼ばれるであろう顔合わせの時に 外科とERのドクターがいた事が不思議だった。 後々話を聞いてみて辻褄が合う。 早い話が 日勤はオペ部。 夜勤はER。 この勤務形態を取っている病院はまぁ、少なくはなくて 都内にもチラホラ。 「今日は、神様降りてこなかったんだって?」 夜勤日誌を書いていると 浅野先生から声がかかった。 「?、かみさま?」 「あぁ」 何の事だか分からずに首を傾げる。 「涼とする時は、降りてくるんだろ?」 「は?」 涼と、スル、時? 「かみさま?が?」 あたしが余りに間抜けな顔をしていたせいか浅野先生が終いには、ぶっ、と吹き出した。 しかも、スルって 何をよ、何を。 ナニ?って事? 「悪い、涼のオペは時間短縮じゃない?今日は時間いっぱいだろ」 一頻り笑った浅野先生はようやく意味の通じるセリフを紡ぎだした。 ああ、そういう事か。 と、ホッと一息吐いた。
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