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「神様なんていつも降りてきませんよ」 あたしは自分の勘違いを隠すように明るく言う。 「へぇ、知らぬは本人ばかりか」 意味深な返しをしてくる浅野先生にまた首を傾げた。 「何ですか、神って」 そう尋ねた時にERコールが鳴る。 「さ、仕事仕事!」 なんだかうまくかわされたような気がするのは、 知らぬはなんちゃら、 のセリフに付けられた妙な微笑みのせいだ。 あたしは訝しげなしこりを残したまま、救急を迎え入れた。 だけど。 この、神様~、の一件を目の当たりにする日は そう遠くなかった。 あの、 5年前の若先生のオペ以来 久しぶりに起こった奇跡とも呼べるオペ。 開胸での心臓弁形成を予定所要時間の約半分で、完璧にかつ丁寧に終了させたドクターのオペに 運良く器械出しとして参加したあたしは、若先生のオペの時と両方に参加していた為、 神のタイミングを持つナース と言われて、神様の存在をここで初めて知る事になった。
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