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埋もれた顔と身体が引き上げられるのは 満足した証だと思っていた。 だけど それは違ったみたいで… 唇から細く零れた糸の名残を ぐいと、押し付けるように拭われて囁かれる。 「蜜…。さぁ、どうしてほしい?」 あたしに 限り無く意地悪をする為――。 「ほら、ちゃんと言えよ?」 触れるか触れないかのタッチは 絶妙。 時々誘われたようにスル、と滑らせては内の様子を探りにくる。 その指で、舌で 燻りを燃やして欲しい。 これ以上ないくらいにまで 渇望して キスでさえも 絶妙なタッチは健在。 もどかしい はがゆい じれったい どれも同じような意味だけど 「…りょ、せん、せ」 オネガイ。 オネガイシマス。 もう待てない 強請る(ねだる)姿はきっと みっともない 眼を細めて 唇の端をクッとあげる これで満足したでしょう? ハヤク、早くあたしを―― 打って変わった愛撫が 鼓動を有り得ない位にまで持っていく。 「――んっ」 部屋に響く 厭らしい音は どれだけ欲しいと思っていたかの象徴で それは一晩中奏でられ続けた。
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