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「そこ……退いてください」
一つしかない出入口の前に立つ中山治樹を睨み付け、出来るだけ大きな声を出す。
「まぁ、慌てんなよ。
積もる話もあるだろう?」
「ありません」
ククっと含んで笑うその小さな音でさえ
耳が拒絶する。
一歩、一歩近付いてくる中山治樹は、さも可笑しそうに造られた笑いを顔に張り付けていた。
「反発するお前もいいねぇ」
伸びた手が肩を掴む。
右肩に思いの外力が加わり
あたしは呻き声をあげた。
「蜜、吉川と付き合ってるんだろ?ヤツとの相性はどうだ」
バッと体を翻して肩に置かれた手を払いのけると
そのまま体当たりをしてドアの方に抜けようとした。
ドアノブに手がかかり少し開いたドア。
「!」
バタンと後ろから伸びた手があたしとそれを押さえつけた。
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