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耳の後ろを這うザラザラとした感触に目眩がする 首に回されている手が、親指が 頸動脈を圧迫している セパレートの白衣の脇腹から侵入してくる手触りはあたしを総毛立たせた。 「いやっ!」 「いや?イイの間違いだろ」 キャミソールが捲りあげられ 直に触れた肌が拒絶を起こした。 「やめてください!」 恐怖と嫌悪がいっしょくたに這い上がって来て頭の中で何かがプツリと音を立てて切れる、いや、切れた。 「……っ、いい加減に…」 そう言いながら体の力をフッと抜いて 相手が怯んだ隙に一気に力を入れて頭を相手の顎に打ち付ける。 振り返って急所に向けて脚を蹴りあげた。 くぐもった声を出してよろめいた中山治樹。 と、同時に 外からドアが解錠される。 「やめてください!中山先生! 気持ち悪い」 あたしのハッキリとした 自分でも驚く低い声。 ドアを開けて入って来たのは 何故か最近ご縁があるこの男。 「中山先生、ここはドクター立ち入り禁止の仮眠室ですよ」 呼吸の荒いあたしの肩に手を落とし 捲れたキャミソールと白衣を丁寧に下ろす。 「しかも、職員にこういった事をされていらっしゃると、こちらも事実を明白にしない訳にはいか なくなります」 あたしを匿う(かくまう)ように前に立ち 顎を擦りながらゆらりと立ち上がる中山治樹をじっと見下ろした。
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