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思えば、こんなにサクッと送り出された事があっただろうか。 お兄ちゃん、やっと妹離れか。 「いってきます」 リビングを出る前に声を掛けて。 「おぅ」 と、こちらを振り返った兄。 やっぱりどこか寂しそう。 なんだか、情を誘いそうなオーラにあたしも気持ちが持ってかれそうになる。 「おに……」 「蜜、避妊はちゃんとしなさいよ!!」 「は!!?」 あたしが言うのと同時に放たれた兄のセリフに本日二回目の絶句。 あ、あ、あ、 有り得ない。 普通、妹に面と向かって 避妊しろ、とか言うわけ?? まぁ、言う家庭もあるだろうけど、うちはそんな家庭なわけ?? …………、そんな家庭だった。 と、改めてこの半年くらいを振り返ってそう思った。 「じゃあね、アホ兄貴!」 バタンと閉めたリビングのドアの向こうから 「アホとは何事ですかー!」 「お兄ちゃんに向かってなんだ、その口の利き方はー!」 と、いつもの煩い親父口調に やっぱりうんざりしながらも きっとそれは照れ隠しやその他の何かも隠そうとした兄の優しさだと 思う。 きっと。 うん、多分。 そして。 玄関先でこの上なく妖しい艶を放出する若先生の元へ進む。 いやいや、あたしにはそう見えるだけであって、本人はそのつもりは無いであろう。 手を差し出されて、ゆっくりとそれに自分のを重ねた。
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