16

1/37
2103人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

16

「まぁまぁ、座って」 部屋の空気がビミョーに重い中、島田先生の能天気な声は健在で。 この人はしょっちゅう居るんだけど、一体いつ休んでるんだろう。 寝なくていい人はほとんど居ないだろうけど、それにしても、昼夜問わずこのテンション。 きっと、あたしが、中山 治樹にヤられそうになた件だな、と予想がつく。 「折原さん」 「はい」 島田先生の音は変わらずで。 今からされるであろう内容の話には似つかわしくない。 「セクハラ、されちゃったんだって? 折原さんカワイーからねー」 ははは、と笑う島田先生に福山さんが突っ込んだ。 「先生、深刻な話なんだから」 とは、言ってるんだけど、福山さんも穏やか~な、ゆっくり~な物言いでそんなに切羽詰まった話ではないようだ。 「あ、いやいや、ごめん。 現場も見たし、聞いたし、中山先生が言うように君が誘った訳ではないのは明白だから、大丈夫」 安心して。と、付け加えて。 「は?見たし聞いたし?ってなんですか」 あたしもそぐわないすっとんきょうな声で聞き返す。 「あ、れ?大森先生、言ってないの」 なんて一応コソコソ話してる風を醸してはいるが、まる聞こえ。 「えぇ、なにも」 飄々と答えた大森先生に あそ、と返した島田先生は再び話を続ける様子だった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!