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やっぱり曲者だ。 心の中で呟いて 背中を見送った。 ERに着いてすぐ あたしを待っていたものは 重症連絡でもなく、 緊急オペでもなく、 「折原さん、お客様」 同僚ナースが指を示した方向は ERの簡易待合所。 そこに 驚愕する。 長いベンチに座った 中山治樹だった。 口の中が渇いて 唾さえうまく飲み込めない 出来れば聞かなかった事にして 見なかった事にして…… そんな衝動をおさえて それじゃダメだと念仏のように 口の中でブツブツと唱えながら 中山治樹の横に立った。 ベンチに座ったまま 見上げた顔は あたしを軽く睨み付けているようで だけど、それはすぐ解かれて ふ、と笑みに変わる。 ちょっとだけ 違和感が取り巻く。 「……何かご用でしょうか」 「あぁ、」 「もう10分で勤務なんですが」 「それだけあれは充分だ」 少し沈黙した後、 次に中山治樹の口から出た言葉は 意外なもので。 あたしの驚愕っぷりは 益々あがっていく。
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