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中山治樹は
潔く、下って行った。
一番最初に出た言葉は、あたしへの
謝罪だった。
“悪かったな”
付き合っていた、と思ってた時でさえ、
言わなかった謝りのセリフ。
今更聞いたところで、どうってことはないけど。
あたしを走り出させた要因の一つにはなったんだろうか。
たった10分足らずの短い時間の中で
自分の思いの丈を語る中山治樹は
今までのどの中山治樹よりも
誠実だった、気がする。
それも、あたしを走り出させた要因の一つか。
とにかく
中山治樹はもういいや。
なんだか、やっと終わった気がする。
もう5年も前の事で
でもまだ5年しか経ってなくて
って、ウジウジ考えてた。
もう考えなくていいや。
そう思うと
自然に溢れる笑み。
終わった。
それを噛みしめていて
ふと、気付いた。
このきっかけを作ったのは
あたしではなく、誰でもない
大森先生だという事に。
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