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この日の勤務は
とてつもなく忙しく。
夏の蒸し暑さも手伝って、季節限定の軽傷患者さんから、重症患者さんまで多種多様に受け入れた。
結局、陽が高く昇った頃に
申し送りが済んで、やっと解放されるも
また、夕方からの夜勤に備えて
家に帰る元気などなくあたしは仮眠室へ向かう。
「折原、また家帰んないの?」
「あ、あさのせんせぇー」
「わはは、死んでるなぁ」
「後でシャワーくらい浴びますから、とにかく寝かしてくださいぃー」
あたしがERの仮眠室へ向かう事が分かったのか
「そっち、ナース満杯」
「え゛ーっ」
「医局、使えよ、オペ部の」
じゃあな、と言い残して、あたしも取り残された。
仕方なくオペ部に続く長い廊下を
重たい体を引き摺りながら歩いて
やっとオペ部に辿り着いた。
医局の扉をノックして
聞き慣れた、福山師長の声がする。
「師長~、寝かしてくださいー」
「あらあら、どうぞ、今日も夜勤なの?」
コクコクと頷いて
一つ奥の扉を開ける。
カーテンが二重に引かれたそこは3畳ほどのスペースで、オペ部の仮眠室となっていた。
まぁ、主にドクターのだけど。
あたしは部屋の隅に積まれたタオルケットに頭からくるまり、空調の程好く利いた部屋で気にせずにゴロリと横になった。
「あ゛ー、つかれたー」
直ぐ様眠りに落ちて行く寸前
衣擦れの音が聞こえていたが
もうそれに構う暇もなく、スゥーっと
引き込まれた至福の世界へ身を馳せていた。
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