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あたしにしては珍しく 夢を見た。 こんなに長く会えなかった事は 出会ってから一度もないからか 若先生が、妙に優しくて。 擦り寄った先に温かな体温 頭を撫でてあたしを引き寄せる せ、んせ 声に出して呟くと すぐに塞がれた唇。 胸元にそれが下りてきて ほんの少しの刺激があたしを刺した。 あぁ、欲求不満 こんな夢を見て濡れるなんて しかも、ここは医局の仮眠室。 アホだ。 まだ覚めきらない目をこすって 腕時計を確認する。 もう4時だ。 シャワー行こう。 タオルケットを元の通りに畳んで 少し感じた違和感。 あたし、こっちの隅で寝たっけ。 確かタオルケットを掴んですぐ側に倒れ込んだはずなのに。 今あたしがいるのはタオルケットの積まれた隅とは対角。 そして、同じく使用感満載で畳まれたタオルケットがあたしの枕としてあてがわれていて。 「なんだこりゃ」 寝ぼけてて、覚えてなんかないけど 枕もセットしたん、だ? 普通、気付くだろ。 あたし、してないよね。 誰かが、この部屋で一緒だった? 「………………」 深く、考えないようにして 部屋を出た。 誰もいない医局。 早く、着替えも、ご飯も済まそう。 中山治樹問題はクリーンになったのに 多少モヤッとを抱えたあたしだったけど シャワーを浴びて白衣を着替えた頃には もう吹き飛んでいた。
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