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家のドアを睨んで 肩を落とす。 「そんながっかりしてんなよ、 すればいいだろ?」 バッと振り向いた勢いは きっと今まで人生の中で数々振り向いた勢いのナンバーワンに輝くものだったはず。 目の前に きっとあり得ない光景が見えた事で あたしの頭はショートした。 思わず口走ってしまう。 「……体液交換を?」 見上げた先には 懐かしい意地悪な微笑み 細められた眼はあたしに向けられ 少し上がった唇の端 その唇が音を出した。 「あぁ」 ちょっと離れていただけなのに すぐに不安になって 会えない間は ビッチリ勤務して 寂しさを紛らす術を身につけていた つもりだったけど あんまり役に立たないんだな、と思った。 どうしてここにいるんだとか 連絡くらいくれてもいいのにとか 聞きたい事がいっぱいで だけどそれ以上に 触れたくて 伸ばした右手を 若先生の左手に絡ませた。
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