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緊張で
繋いだ瞬間に汗ばんでしまうほど
足りなかった。
何がって。
吉川 涼が。
引き寄せられて
向きを変えて歩き出す
久しぶりに広い背中を見て
何か急に込み上げてきたモノが
溢れるのを唇を結んで堪えた。
エレベーターという
狭い密室が緊張を煽って
あたしの身体を支配する
全身よりも一回りも二回りも大きく響いていそうな拍動は手のひらを通じてきっと若先生に伝わっている。
「おかえりなさい」
恥ずかしさと
緊張と
爆発しそうな欲求を抱えていて、若先生の方を見ずに口から出たセリフ
25階から上にたった3階上がるだけの密室は直ぐに開かれて
部屋に入ればまた、密室。
久しぶりに感じたい草の匂いに
落ち着きを取り戻したと思った瞬間
「ただいま」
低く、優しい音が聞こえた。
ひんやりとした空気の流れが
ドアが閉められてまた、動きを止めた。
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