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膨らみを覆っていた 掌が徐々にずらされて ペナルティ、と言われた理由が明らかになっていく。 それは身に覚えのないもので 左の鎖骨から5センチほど下 ちょうど膨らみ始めた真上に 一際目立つ紅く付いた跡 「な、に?コレ……」 「聞いてんのはオレなんだけど」 あくまでも優しい口調 ただ、音はとてつもなく低かった。 よく、考えて。 考えて、考えた。 もちろん、身に覚えなんかない。 この4か月はほぼ、夜勤とオペ勤の繰り返しで、休みは必ずジムに行って…… だから、そんな事をしている暇すらなかった。 と、いうかそんな相手すら居ないし。 明確な理由が見つからず 何も言えないでいると 「言えないの?」 低い音が一層低くなって 「言えないような事、したの」 フルフルと左右に首を振るのが精一杯で 「ふーん」 「き、記憶にございません」 ふ、と笑って 「政治家、みたいな事言うね」 「……あ、ンっ」 後ろから滑り込んだ長い指がスライドを始めた。 「思い出すまで、イレナイ」 鏡に写る顔は 相変わらずの意思悪な顔 卑猥なセリフは不随 焦らすだけのタッチがもどかしい だけど与えられる刺激は、歯痒くも徐々に高まりに導いていて 必死に手繰り寄せる記憶と もぅ、どうにでもなれ、というような投げやりな思考とがミックスした脳内は どちらかというと後者が8割を占めていた。
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