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湯船に放り込まれた頃に
一つの歪み(ひずみ)に辿り着いた。
「……あ!」
そういえば、忘れてた。
昨日の朝?いや、もう昼過ぎだったか、夕方か。
少し感じていた違和感。
クスリ、と笑って
一呼吸置いて
「何か、思い出した?
聞こうか、言い訳」
冷静に、言い聞かせるように呟いた若先生。
あたしの背筋はピン、と伸びて
首筋に這う温かい蠢きに伺いを立てる。
漏れる吐息を精一杯堪えて
若先生に挟まれている身体に力を入れた。
「Please make an excuse」
言い訳してみろ、と言われて
言い訳でもなんでもないんですけど
と、思いながら、何も言えずにいた。
お湯の中でもハッキリとわかるくらいに
滑るあたしのうわべだけを撫でながら
若先生は更に呟いた。
「Did i say, i won't screw until you remember it 」
(言っただろ?思い出すまで、イレナイって)
頭を
本能ごと揺らすそのセリフは
高ぶりたいあたしには絶大な効果を発揮していて
でも、尚且つ、言えなかった。
若先生と間違えていた、なんて、死んでも言いたくなかった。
いくら、意識混濁の中で起こっていた事だとしても、若先生ではない相手に擦り寄って、しかも起き抜け濡れました、なんて、口が裂けても言えない。
言ってしまって楽になりたい衝動に駆られながらも、キュッと、結んだ口から漏れていくのは達しきらない覚めた吐息ばかり。
「You are obstinate」
(強情だな……)
若先生の英語は
どこか厭らしくて、卑猥に聞こえる
凄く、癖がなくて、ネイティブみたいな響きで
普段日本語を主に話している人が
英語を、しかもこんなに綺麗な英語を話すと
ヤられる。
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