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身体中に鳴り響く心臓の音が
一番けたたましく聴こえる自分の耳の奥
あるはずの無いそれが
まるで真横で打っているかのよう。
すぐに火照った頬から、首筋へと指先だけが辿り
顎へと滑った後に
唇をスルリと撫でた。
「なんて顔、してんの」
ついさっきまでは
視線を合わすのも避けていたのに
今は反対に逸らせない。
「……へんな、顔、してますか?」
ひと呼吸置いて
返した答えに
若先生の両の眼が
あたしの眼の動きを追う。
「変な顔?」
ふ、と笑ったすぐ後に
寄せられた唇は動く。
“オレを、壊すカオ”
小さく
掠れた音がして間もなく
呼吸が重なった。
壊されるのは
きっと、あたしの方、………………だ。
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