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一通りの分類が終わった頃にオペ部から上野さんもやってきた。 「あー、混んでるね」 一言そういった次には、待ち患者さんの手首にはめたゴムを確認して、患者さんを誘導する。 「順番に処置いたしまーす、こちらへどうぞ!」 そして、他スタッフも急変がないかを確認しながら対応していく。 「折原、こっち、入って!」 ER主任看護師の小高さんに呼ばれてあたしはオペチームに。 二重扉の前室で消毒を済ませ、手袋をはめる。 「折原入ります」 「折原ー、器械お願い!」 トラック運転手のオペだった。 あぁ、内臓損傷、と見て取れるくらいの腹部の変形と変色。 血圧も低く、脈も、…弱めだ。 大森先生が慣れた手付きで電メスを動かす。 早く、出来るだけ早く、なんとかしてほしい一心で、器械を渡した。 大森先生も、とても滑らかにオペをするヒトで、最近はあたしとコンビを組むことも多くなってきていて、気心知れた仲。 知れたくなんか無いけど。 一つ修復しても、まだ出血は続き 手を休める事無く、損傷部位の特定にかかる。 こんな時に、ふと思うのは ①ないなー、ないなーと言いながら出血箇所を探すドクターと ②無言で探す ③焦るドクター が、いる。 大森先生は勿論②で、焦ることも無く 難なく修復に取りかかる。 あたしもそんなタイミングを見計らって器械を渡す。 別に、ドクターの指示が出てから渡したっていいんだけど そこは常に学習の世界で、後は慣れ。 「完了」 「お疲れ様でした」 トラック運転手のオペが終了した頃には賑やかさは落ち着いていて。 さっき優先した森本さんはやっぱり軽い脳挫傷で、川上さんは肋骨骨折による内臓損傷だと判明。 それぞれに処置やオペがされたと聞いた。
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