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「やり手がいるんだね、きっと」 「案外、霧島先生にお目当てがいたりするんじゃないですかっ!?」 きゃー、と言いながら高橋さんが外科チームに視線を投げた。 そういえば。 その霧島先生に あたし、告白?されたんだっけ 「蜜さん、前職場で同じだったんだでしょ? 何か知らないの??」 急にフラれて 枝豆がふた粒、喉をそのまま通過した。 「へ?前のとこで? なんも知らないよ?」 すっごいすっとんきょうな声が出て 取り繕うように、慌ててつけ加える。 「あ、でも、みんな憧れの的だったよ、カッコいいもんね、大武先生」 あたしはウンウンと頷いて、ビールを飲み干した。 ここ最近は、忙しいのもあって 大武先生とちっとも会う事すら無くて 一体全体どうなっているのかさえも不明だけど。 ま、もうきっと時効なんだろうな、と自己完結したりして。 「霧島先生ってN大に彼女いましたよね?確か!」 「あー、一時期噂になってたね……」 「へぇー」 新しいビールがちょうど運ばれて来て アルコールがちょっとあたしの意識をふわふわと誘い出した事に気付く。 「あぁ、酔っぱらってきた!」 「えー。もぅ?!」 「はい……」 「あー、 蜜さん、夜勤3連チャン後の今日昼間だもんね、寝てないでしょ?」 「あ、そうか!今日は代打だもんね」 そう。そうだった。 昨日の夜勤が比較的落ち着いていて ちゃんと仮眠が取れたんだ。 今朝、日勤に一人病欠が出たから、あたしがそのまま入ったんだった。 寝ようよ、家に帰ってさ…… 「夜勤ばっか入ってるねー、あ、お陰で折原先生のオペ、あたしが器械出ししてるんだけども!」 「あはははー、ウケますね!」 「すいません…」 「折原先生、昔っからあんな凄いオペすんのかなぁ」 「さぁ?でも、ずーっと危なっかしいところで医療繰り広げてたんだと思いますよ?」 へぇー、と頷く二人。 「こないだ、緊急で赤ちゃんの心臓、やったんですけど、凄かったですよ??」 高橋さんのセリフに、あぁ、と頷く二人。 「こないだ晩御飯にカレー出したら、 “俺はシーフードがいい、って言っただろ?”ってスッゴい拗ねて、ご飯とサラダしか食べなかったんですよ?」 またまたへぇー、と頷く二人。 疲れてても、何でも、たまの息抜きで こうやって他愛もないトークが出来るのが楽しくて。 この日は、飲み過ぎた。
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