16

38/39

2120人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
その事実に気付いたのはトイレに行って、用を足し、立とうとしたその時。 ゴン と、いう音の後 暫くして、額が鈍い痛みに襲われた。 真っ直ぐに立ち上がったつもりがちょっと前のめりになったのか、前の扉に頭をぶつけたらしい。 「あー、…………………」 よくない、けいこーだ。 フワフワする足取りでトイレを後にして。 もう、夕焼けが殆ど西の端っこに追いやれた空を見上げて、ヤバい、と呟く。 こんな時なのに、夕闇とのコントラストがそれはそれは綺麗に見えた。 フラフラと席に辿り着いた時には有り得ない光景を目にして、思わず叫び声をあげてしまう。 「ぎゃっ」 「おー、お疲れ、折原」 「お疲れ様です、折原さん」 隣のテーブルには島田先生と、大森先生が鎮座している。 「呼んじゃった」 荒井主任がペロリと舌を出した。 「蜜さん、大丈夫?」 「うーん、大丈夫じゃない……」 あたしは椅子の背もたれにどーんと体を預ける。 「なに、折原、酔っ払い? めっずらしい事もあるもんだなー」 能天気な島田先生の問いかけは あたしにはほぼ届いていない。 「うー………ん」 あろう事か そのまま眠りについてしまう始末。 楽しそうな 会話を遠くの方で聞きながら…………
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2120人が本棚に入れています
本棚に追加