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優しく触れる その名残すら苦しい もうそれすら叶わなくなるのに 側に居られなくなる。 考えると余計に眉間が詰まった。 鼻の奥がキュッと縮まる あぁ、あたしの脳が涙腺を刺激するように伝達してる。 涙を流すように命令を下す。 抗うように 唇を噛んで、凌いだ(しのいだ)。 「文句言わねぇの」 何の事だか分からずに 顔をあげる バッチリと絡んだ視線に 少し恥ずかしさを覚えて俯いた。 「何がですか」 「顔、あげて」 「…………」 仕方なく顔を上げると やっぱり恥ずかしくて スラリと整った顔立ちに湛えた艶 色の溢れた瞳 クラクラする 「T大に誘ったのはオレなのに」 「言いません、あたし楽しくやってますから、こんなに楽しくていいのか、ビックリするくらい」 やっぱり下を向く。 「だから、お気になさらず」 …………行ってきてクダサイ。 若先生のその手で もっと沢山の人を救ってあげて 下さい。 言えなかったセリフを飲み込んで また、顔をあげた。 「ソソル」 片言のように聞こえたそれは 直ぐにお互いの唇に吸い込まれて 優しく触れる
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