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7月に入って 季節は急激に夏へと走り出した。 あまり 雨の降らなかった梅雨は いつの間にか明けていて 毎日強烈な陽射しが ヒートアイランドに拍車をかける エコだECOだ、と言われていても やっぱり電気に頼らなければならない 生活。 「暑……」 空を見上げて 飛び立ったばかりの飛行機に目をやる。 太陽は高く 光の輪を幾重にも描きながら 青く、澄みきったキャンバスに 永劫の存在を刻み付けていた。 8月に入ったら なんて、言ってたのに あっさりと前倒して行っちゃうあたりが 売れっ子らしい……。 別によかったけど あんまり悲しくならなくて 「あれに乗ったのかな……」 若先生からは特に何を告げられた訳では無く。 今日だって、あたしが休みだったからこうして来られたけど、休みじゃなかったら なかったら、…………どうしたんだろう。 とにかく、今は帰らなくちゃ。 若先生は空港まで車でやって来た。 自分の車。 “ちゃんと乗って帰って” と、言われているので、今はこの 高級車を無事にお家へ連れ帰らないと。
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