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脱いだコートと鞄を隣の席に置いていると、玲奈ちゃんが、どーぞ、と言いながらビールを目の前に運んでくれた。
「ありがと」
「ごゆっくりー」
ニコニコしながら、手をヒラヒラさせる。
「とりあえず、飲んでいーですか?」
あたしは間髪入れずに大森先生に聞く。
「どうぞ」
少し呆れ気味の音が聞こえて。
だけど、知らぬフリをする。
お疲れ様でした、と前置きをしてから、半分位を飲み干した。
「あー、美味しい!」
今日は、疲れた、と思っていたから余計に美味しく感じるアルコール。
素直に感想を述べて、ペロリと泡ひげを舐めとった。
「相変わらずいい飲みっぷりですね」
大森先生は一言そう言うと、鞄の中から透明の長細いケースを取り出した。
「こちらで間違いないですか」
蓋を開けてあたしの方へソレを差し出す。
紛れもなく、失せた筈のネックレス。
若先生から貰ったモノだった。
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