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「へ?」
「あんたの考えてる事は、手に取るように分かる。
だからハッキリ言うけど、違う」
タラー、と音がしたかと思うくらい
背中を滑った、嫌な汗。
こんなにも寒い季節なのに
暖房が妙に暑く感じて。
「暁、どういう関係?この、アホと」
あたしをチラリ一瞥して、玲奈ちゃんに
大好きな(大好物だと推測される)ウォッカを頼んだ。
「おんなじ職場」
大森先生はサラリと答えた。
「あ、じゃ、ごゆっくり、あたしはカウンターへ移動します」
荷物を抱えようとすると大森先生があたしを呼び止めた。
「ここでご一緒にどうぞ?」
「は?」
大森先生はそこで、今日初めて表情を崩す。
ニヤリと微笑んだその顔は
過去に二度とほどお目にかかった事が有るような、無いような………。
「Hush money」
そう言われて、瞬時に全てを理解したあたしは、ストン、と椅子に落ちた。
く、く、口止め料って………
それは、このネックレスの事は黙っててやるからって事??
じゃあ、なに?
ここで飲まなきゃチクっちゃうっての?
あ、有り得る。
サラーっと言っちゃうんでしょ?
いつだったか、若先生が大森先生の襟首を締め上げていたのを思い出した。
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