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休み明けの日勤で 荒井さんにネックレスの事を聞かれて。 荒井さんのお陰で発見に至ったという事もあり、返してもらった事実を打ち明けた。 「へー、やっぱりお泊まりしてたんだ」 「いや、そうではなくて………」 「いぃ、いい!若いんだから! あ、ほら噂をすれば、大森先生だよ」 オペ部に姿を現した大森先生は、数人のナースに何かを指示していて。 「やだ、大森先生、口の端切れてますよ?」 「ああ、ほんと、腫れてますね」 内側の粘膜だけの内出血だと思っていたら、唇までガッツリ噛んじゃったんだ。 正当防衛の筈なのに何故か心苦しくなる。 しかも、ナース達余計な事は聞かんでよろしい。 ………まぁ、目についたら聞くわな。 大森先生はいつものように涼しげな顔で答える。 「あぁ。すいません、目立ちますか? お見苦しいですね」 「そんな事ないですよ、口内炎?」 「いえ、猫とじゃれていたら噛まれたんです」 「えー、大変」 「消毒は?」 「大丈夫です、これでも腫れはひいたんで」 ね、ね、ね、 「へー、大森先生猫飼ってるんですか?」 「いえ、知り合いのですが」 「大森先生が猫と遊んでるなんて、ちょっと見てみたい!」 猫! 猫、知り合いの、猫だって。 「猫とじゃれる大森先生か」 隣で会話を聞いていた荒井さんまでもがポツリと呟く。 「大森ファンはある意味萌えるかもね」 「そうですか?キモイ」 「またまたー、折原もじゃれたんじゃないのー?」 「………どーしてそっちに話が行くんですか。 じゃれてないですし、たくもないです」 ふと、気づくと、ちょうど視線をこちらに向けた大森先生と目が合って。 「おはようございます」 「おはようございます」 飄々と言ってのけて、それ以上は絡んでこない。 「あ、ほんとだ正面から見ると けっこう目立ちますね」 荒井さんが自分の唇に指を置いて話しかける。 「軽く噛まれただけなんですけどね」
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