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「あぁ、逆上せる………」
お風呂は大好きなんだけど、長湯出来ないのがたまにキズなんだよね。
と、心の中で呟いて。
「あ」
着替えがないかも。
そりゃそうだ、そのままこっちに来ちゃったんだしね。
タオルをくるくる体に巻いて
意気揚々とリビングへ向かう。
何やら音がするから、
あぁ、兄さん帰ってきなんだなぁ、と呑気に扉を開けた、
「おかえりー」
そう言いながら兄の方には目もくれず冷蔵庫を漁って、炭酸水を取り出した。
最近のマイブームで、硬度の高い炭酸水を愛飲しているあたし。
シュッ、と小気味よい破裂音がしたと同時に兄の声。
「蜜!なんて格好してるんだ!」
なんだか悲鳴に近い声。
「へ?いつもとおんなじでしょ?」
あたしはカウンターキッチンからソファーの方へ視線を投げた。
一瞬で凍りつく
とは、正にこの事だったに違いない。
ソファーには兄。
その向かい側には、今の、今さっき別れた、いや、逃げ出して来た筈の男性の姿が。
「こんばんは、お邪魔しています」
ゴッキュン、というヘンな音を立てて飲み込まれた弾ける水は、沢山の空気を含んでいて、直ぐにその塊を吐き出したい衝動にかられた。
また………かられてる。
「こんばんは、大森先生
よく、お会いしますね………」
ビックリするくらいの落ち着き払った口調で、あたしはその事にビックリしていた。
「あ、そうか。
すいません、お見苦しくて」
あたしはカウンターにペットボトルを置いて、急ぐでもなく自室へ向かった。
「ちゃんとパンツ履きなさいよー!」
後ろから叫ぶ間抜けな兄の声に苦笑いしながら。
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