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「さっすが、妹、いいのくれるねー」 「………」 折原先生は持針器を器用に振りかざしながら結紮を進めた。 アホか、このドクター。 普通だろ、早く創を閉じやがれぃ。 「いやー、素晴らしいね、血の繋がりって、阿吽の呼吸」 「………」 よくこんなに喋りながら素早く結べるもんだわ。 「あー、良かったね患者さん、早く治るよー」 「………」 ガーゼよし、 クリップよし、 「妹に直介してもらえるなんて、そうはいないだろーね」 「…先生うるさい」 あたしは隣でペラペラ騒ぐ折原先生の私語をピシャリとストップさせた。 助手に入っていた山下先生が、ヒクヒクと笑っている。 そして小声で、バーカ、と呟いた。 「はい、OPCAB終了です、お疲れさまでした」 グッと言葉に詰まった執刀医、なんとか終了合図を出して、時計を見上げた。 「うーん、3時間半か、いいね」 「お疲れさまでした」 「お疲れさまでしたー」 片付けも滞りなく終わり、無事に引き渡しも済んであたしは引き続き夜勤へ向かう準備をする。 今日は夜勤シフトで休みが出た為、代わりに入る事になっていて。 今日から4日間、連続夜勤となる。 「蜜」 オペ部からERへ向かう途中の長い廊下を後ろから追いかけてくる声。 「げっ、折原先生」 あたしが不快さを露に(あらわに)すると 「そんなに照れんなよ、こっちが照れるだろ」 勘違い甚だしい男が駆け寄ってきた。
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