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目を覚ました時にはもう 窓の外は真っ暗で、大きく伸びをして 布団から這い出た。 「さむ」 あれ? 手離せなかったはずのダウンコートが壁に掛けられていて。 あたし、脱いだっけ? ここ最近の統計では いつも、着の身着のままの倒れてるのに そして冷たくなって目が覚めるんだ。 お兄ちゃん、居るのかな。 リビングへ向かうと、シンとした空気が暗闇の中で際立っていて 人の気配ももちろん皆無。 「居るわけないか」 真っ暗でも、窓から差し込む月の明かりが部屋を照らしていて こんな光景はいつか、若先生の部屋で見た、彼と始まった頃を思い出させる。 パネルでバスルームにお湯をはる。 「お腹すいた」 冷蔵庫を開けて、ヤクルトを取り出し 喉に流し込んだ。 勤務が不規則になってきた最近 毎日一本頂いている。 甘くて、美味しいし、お腹にも優しいし。 バスルームの準備が整った事が知らされて、直ぐに移動した。 無造作にあげられている髪をほどくと かなり伸びた事が明らかで。 肩甲骨を通りすぎて 背中の半分くらいまである髪を手で纏めて 「切ろっかな」 呟いて、気付いた。 ドキリ、と止まる訳のない拍動が 一旦止まったかもしれないくらいの錯覚に襲われる。 思わず鏡に近付いて 鏡に触れてみる。 息をするのを忘れて、バスルームに飛び込んだ。 呼吸を再開したと同時に凄いスピードで刻み出した心臓。 血圧がかなり上がったんじゃないだろうかと思われる、軽い立ちくらみ。 「…な、ぜ」 疑問を口に出してみても解決しない。 バスルーム中の鏡にもう一度向かい合って確認する。 鎖骨のちょっと上に 紅い跡。 毎日じっくり見ている訳じゃなかったけど、確か、昨日まではなかった。はず。
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