2078人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
最近気付いた事がある。
ペントハウスは照明の色が他の階とは違うんだ。
下の階までは落ち着いたオレンジで
ここはちょっとシャンデリア風のもっとシックなオレンジ。
そして、部屋の数も圧倒的に違う。
このフロアにはたったの5世帯しか存在していなかった。
そんなフロアに登ってきたあたし。
いつもとは違う緊張感に包まれて
扉を解錠する。
フットライトが照らした足元にはいつもと変わらずの玄関。
「お邪魔します」
緊張で久しぶりに心臓が口から出そうな感覚に襲われながら奥まで足を進めた。
中学生みたい
フッと口許が緩んだ笑いを引き締めて。
光のない空間は変わりがない。
だけど、ちょっとした小物の位置とか
置かれたモノとか。
あたしの仮説に色が塗られていく。
クルリと向きを変えて若先生の寝室をノックする。
息を飲んで扉を開けてみたが
そこは空っぽで。
だけど、部屋の隅に置かれた
小さな黒のカートが目に入った。
仮説だった筈のものは
立証されつつあって。
部屋を飛び出したあたしは、一気に階段を駆け上がっていた。
レースのカーテンさえも開け放たれた広い畳敷のそのフロアは
さっき家でみた月明かりよりも数倍明るいように見えて。
テーブルの一番奥、一番月に近い席にあたしの望んだ姿をやっと確認した。
最初のコメントを投稿しよう!