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こんな廊下の一番端っこ迄、意味もなく連れてこられて、また向こうまで行かなきゃいけない、っていう思いと
さっき聞いた噂話の真偽が不明なのと
とにかくビックリするくらいに乱れた心の中。
こんなに動揺するんだ、あたし。
そんな必要ないくらい、愛されてるはずなのに。
行って戻って来た道を
また引き返してロッカーへ向かう。
長い廊下のこちら側からは死角になったところで、向こうに見える二人。
どちらも見覚えのある、人目を惹く容貌で。
あぁ、噂の二人、だと思った。
腕を絡ませる女性は
夕べ見た、ブロンズヘアの綺麗な人で。
「お疲れ様です」
見知った男性に声をかける。
頭を下げて通り過ぎて
その瞬間から心臓がザクザクと聞こえてきた。
「お疲れ」
少し後で聞こえた音は
いつもと変わらない低いモノで
昨日、明け方迄何度も聞いたソレと変わらない
若先生があんな風に歩くのを
初めて見た。
何かを囁くブロンズの女性。
日本語では、無い。
それだけ、分かった。
そして、何故大森先生があたしを引っ張って、一番端っこのトイレに押し込めたか。
それも、分かった。
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