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こんなに 情欲をそそるキスをされて、何も感じない訳がない。 所詮、あたしはメスなんだ。 オスの求愛行動に陥落してしまうメス。 だけど だけどね、 やっぱり違うんだ。 やっぱりダメなんだ。 「………イ………っ、てー」 離れた大森先生を見上げると、唇の端が腫れ上がっていて。 「口のキズってあっという間に膨らみますね」 「ひでぇ………」 「先生が悪い」 「まぁね」 唇をめくると暗闇でも分かるくらいの内出血が粘膜に黒く滲んでいた。 「噛まれたのは人生で2回目だよ」 「そうですか、じゃあ、噛まない方としてください」 2回目、と、いう事は あたしにしか噛まれた事が無いって事か。 「そのうちなつくようになるだろ」 「ならないと思います」 少しの沈黙の後。 「それくらいの方が調教しがいがあって、いい」 「は?」 「じゃあ、折原先生に宜しく」 大森先生はやりたい事をやるだけやって、言いたい事を言うだけ言って、あっさりと部屋を出て行った。 「大森のヤロー………」 三度目になるこのセリフ。 大森先生が何を考えているかさっぱり分からない。 こうやってやたらに近づいて来たかと思えば、次に会った時には、こんな事など まるでなかったかのように、よそよそしくて。 そして、また忘れた頃にドカンと爆発させたりする。 飴とムチの応用か。 執着と放置? 確かに、普通こんな事されて、多少なりともドキドキしちゃって、そして、放置されると気にならない訳はない。 策士大森め、騙されないから。 あたしの思考はここで完結して。 溢れてきた睡魔に対抗する事もなく 自室へ向かった。
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