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この大森先生はあの、策士大森と同一人物か。 使い分けている完璧さが凄い。 本当は、 噛まれるなんて、よっぽど嫌われてるんですね なんていう一言でも言ってやりたい。 だけどそんな事をもしウッカリ口にして しつこいようだけど、今流行りの十倍返しを食らっても嫌だし、その話題に触れるのも避けたかった。 飄々と去っていく大森先生の後ろ姿に ナース達が呟く。 「あたしは大森先生に噛まれてみたいなー」 「えー、やらしー」 それを聞いて、 「ほら、萌えてる」 荒井さんがあたしの方を向いて楽しそうに呟いた。 噛まなきゃよかった、 と思ったりもするけど。 押してもビクともしない男の力に対抗するには、弱い所を攻めるしかなかったし。 あたしは被害者だし。 それに、あのキスをあのまま続けるのはどうかと思ったし。 大森先生にはいつからかずっと言われ続けてきた。 “隙が有りすぎる” って。 やっぱり隙だらけだから、狙いやすいって事なのか。 若先生、ちょっと会いたくなりました。 「さて、オペ準備いくか」 沈んだ空気が流れかけたのを 荒井さんの一声に塞き止められて 「くっそー、仕事の鬼と化してやる」 意気込み新たにオペ室へ向かった。
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