19

6/23
前へ
/32ページ
次へ
「え、いいです、まつもとサン!」 「からかったお詫び」 「ウソ、無理!」 「蜜さん、女の子はご馳走になっとけば?」 「え!力くんまで!」 「有り難うございました」 「おー、ごちそー」 「ま、待って松本……!」 あたしは松本さんに続いて外に飛び出す。 思いの外勢いがよくて、さん、をいう前に松本さんの背中にぶち当たった。 「痛いよ」 「……す、すびばせ、ん」 あたしが財布からお金を出して松本さんに渡そうとして その手首を取られた。 「何?またしてほしいの?」 キラリ、と光る微笑みは 月明かりで威力倍増 こんな時にまた、男なんだ、という力の強さに反応する。 「……い、いぇ、ご、ごちそう、サマでした」 「いーえ、どういたしまして」 松本さんが歩き出した、その少し後を追い掛けるように続く。 火照った体には、冷たい風が心地いい そして、何故だか気持ちまでもホクホクしていた。 ぶっきらぼうだけど、面倒見がいい。 うん、そうだ。 “あんな女に靡かないよ” そう言ってくれて “心底アンタに向いてると思うよ” そう言ってくれた事が、かなりキイてる。 別に誰かにそう言って欲しかった訳じゃ無いけど 味方になって欲しかった訳じゃないけど あたしは弱いし、狡いし、隙だらけだし ……だからなにか確証めいたものが欲しかった。 自分を正当化する為に欲しかったんだ。 結局保身だわ。 「はぁ」 大きく溜め息をついた瞬間にこちらに振り返った松本さん 「多少障害がある方が燃えるだろ?」 「は?」 再び歩き出す背中を見つめて 「ありがと、松本さん」 そう呟いた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2129人が本棚に入れています
本棚に追加