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オペ室で顔を合わせる蜜は
まるで別人のようだった
まだ直介をする事は無かったが
外回りとして、よくオペの進行を見ている
夜勤でＥＲに入っている彼女は
なんでもこなしているらしく
優秀だ、と浅野が言ってた
優秀、か
案外、オレが心配している事なんて
どこ吹く風、なのかもしれない
彼女を側に置きたくて
Ｔ大勤務を半ば無理やり勧めたのに
その本人はスキルアップの為だと言って
渡米する
しかも、年単位でだ
オレの渡米が正式決定になった事で
蜜の耳にも、オレ以外の誰かから噂として入るかもしれないな
蜜は、オレを恨まないだろうか
オレが蜜に渡米を告げない理由はソコだった
「Shit！」
「え、すいません」
器械出しナースが隣で謝る声に
今はオペ中だという事を思い出した
「あ、ワリィ、違う」
ナースの差し出した鉗子を受け取って
オペに向き直る
「なになに、吉川くぅん、雑念？？」
「すいません、山下先生」
向かいを見るとマスクから覗いた目が
三日月型になっている
「まー、雑念も入るわなぁ」
山下先生の言いたい事は分かっていた
蜜が周りでウロウロしてるからだと
結びつけたいらしい
ま、強ち、違うとも言い難いが
「違います」
「あ、そぅ」
この女、何気に勘の鋭いところがあって
侮れ(あなどれ)ねぇ
ワリィ、患者
余所事を考えていた事を謝って
今度はオペに集中した
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