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頬に伝う一筋を唇を寄せて拭い取り
脱力した蜜から這い出る
そのままバスルームに移動すると
目の前のミラーに移った自分に
失笑する
もう、つきまとう後悔の念
薄い隔たりを取り去り
そこに溜まった己の欲を
溢れる笑いと共に投げ捨てた
頭からかぶった湯の温度は至極低く
ともすれば身震いしてしまいそうだ
「カッコわりー……オレ」
40歳手前でこんなに色恋沙汰で
イカれるなんて
思いもしなかった
オレの上で弾け飛ぶ飛沫が
空気中に散らばっていく様子さえ
面白くて、可笑しくて
いつの間にか嘲笑へ変わったそれにさえ
気付かないでいる
人の中に
こんなに厄介な感情がある事を
この歳まで知らなかったってのも
問題があるが
シャワーを止めると
身体が体温を上げようと筋肉を震わせて
ガタガタと揺れる
「さみぃ」
早々にベッドに潜り込むと
じきに体温が回復する
淡い光の中で
蜜の身体に浮かぶ、自分の刻んだ印
……いや最早、傷、だろ
その傷を撫でながら思うところは
オレをここまで発情させた蜜の凄さ
そして
やっぱり、愛しいというその感情
蜜アプリがあったら
迷わずインストール
即、実行だろ
さっきまでの
闇のような気持ちとは正反対の
この変わりように溜め息を落とした時
目の前の蜜がオレに手を伸ばして
擦り寄って来た
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