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眩しい朝陽の中、走らせた車で
蜜は直ぐに寝息をたて始めた
「……だろうな」
呟いて、少しだけ開いていた窓を閉じる
あれから寝かせてやる事すら出来なかったオレは
久しぶりに心地よい疲労感に
ほぼ、ナチュラルハイの状態で
このまま吉川医院に出勤の予定だ
今日が久しぶりの丸1日休みだと言った蜜
明日はまた夜勤だと聞いた
オレはきっと、また、今晩にでも
彼女を捕まえると断言出来る
それくらい、会える時は会っていたい
改めて、想いの強さを知る
蜜を起こさないように抱えて
エレベーターに乗る
何度か体験しているシチュエーションに
既視感を感じて、鼻から笑いが漏れた
ベッドに蜜をくるみ
朝の一時を過ごす
「疲労困憊、って感じだな、お前」
寝顔に話しかけるなんて
オレもホントに丸くなったもんだ
と、やっと自分でも人間らしさを認めて
部屋を出た
運良く、エレベーターで一緒になった
折原先生
「おはようございます」
「おはよう」
折原先生が欠伸を一つ噛み殺した後
「蜜、一緒?」
「はい、まだ寝てますが」
「そー」
オレと二人の時は
基本的に面白可笑しい攻撃性は見せない彼
エレベーターを降りる直前にこう言った
「吉川、今日何時に終わる?」
「今日は、吉川で半日なので1時半には」
「そう、大学行かねんだ?」
「はい」
「オレ3時には上がるからその後、ちょっといい?」
「……分かりました」
「悪いな、じゃあ、連絡する」
駐車場で、斜め前のスペースに停められた高級車、と呼ばれる車に滑り込んだ折原先生を見送って、オレも車をスタートさせた
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