29 #2

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それが 扉が開いたエレベーターに 乗り込むとそのまま壁際まで 追いやってきた。 驚いたのは一瞬で。 壁まで5センチくらいの距離で 瞬きを数回。 両側には伸びた腕 ピタリと張り付いた体は 正しく釈迦のモノだった。 音も無い密室で 少しだけ上に引っ張られる感覚の後 1階を目指して動いていく。 「蜜」 耳のすぐ後ろに唇。 低く、それでいて優しく囁かれる。 もうずっと刷り込まれてきた 厭らしい部分を根っこから 揺れ動かす、その音。 こんなに ぐちゃぐちゃな気持ちなのに なんて、淫乱な女なんだろう。 あたしの細胞ごと持ってかれてるみたいで 悔しいのと 甚だしいのと それでも 愛しくて。 何が嫌なの。 どうして、素直に受け入れないの。 だって 何も聞いてない、何も言われてない。 はい、そうですか。 なんて、言えないし。 唇をガリ、と噛んで 甘さを払拭する。 ちょうど1階に到着した箱は また、音も無くその扉を開放した。
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