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本来、こんなに裕福な商家に嫁ぐのならば、両家の家柄や財産に釣り合いがとれていなければならないし、結納金もきちんと収めなければならない。 しかしアタシは貧しい農村生まれ。 借金のかたとして父に遊郭に売られ、父はその後から行方知れず。 そのため、両家の対面もなし。結納金もなし。 そんなアタシが友次郎さんと結婚。 反対されて当然なのである。 しかし、アタシたちの結婚はおおらかなお義父様の、寛大な心によって認めてもらえた。 「家柄なんて関係ない。 いいじゃないか、友次郎の好きにさせて。 それに松枝は読み書きも算盤もできるのであろう? それなら店の助けにもなるし、大歓迎じゃ。わはは」 と、言ってくれたのだ。 遊郭で育ったアタシは文字の読み書きも算盤も、郭内で教わっていた。 それを良しとしてくれたのだ。 お義父様には感謝してもしきれない。 お義父様が認めてくれたから、お義母様もしぶしぶ認めてくれた。 いや、認めたことにしておいてくれているのだ。 そういう事情もあって、アタシはお義母様から嫌われていること――厄介者として見られていることを日々の生活から重々に感じていた。
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