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「長男の嫁、松枝を殺したことに間違いはないんだな?」
「えぇ」
ここは町奉行所。
私は今、松枝殺しの件で吟味方から取り調べを受けていた。
※町奉行所…現代でいう、警察と裁判所の役割を持った場所
※吟味方…訴訟や犯罪を調べただす役
あの日、松枝が陣痛を起こしたあの晩。
深夜にガサガサと音がするので起きてみると、松枝が苦痛に顔を歪めながら、お腹を抱えて行灯に火を灯そうとしていた。
もしや松枝に陣痛が来たのだろうか?
もうすぐ赤子が生まれてしまうのだろうか?
私は焦った。
赤子が生まれてしまえば、松枝は一層、私達家族との絆を強めてしまう。
松枝のような、劣悪な家系の者が家族の一員になることなんて認められないものなのに。
なのに、父さんは友次郎と松枝との結婚を認めた。認めてしまったのだ。
お父さんが認めるから、私は松枝との生活を渋々我慢をしてきていたが…
目の前には松枝が陣痛で苦しんでいる姿。
もうすぐ赤子が生まれてくる姿。
それを見て、私はもう我慢ができなかった。
松枝を。赤子を。
このまま生かしてはおけぬ。
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