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死んだ。
そう思ったけれど、念のためにもう1度、松枝の頭に木槌を打ち込んだ。
次は痙攣もせず、まるで人形のようにただピクリとも動かなかった。
よし、これでいい。
一仕事を終え、フゥっと一息ついた時――
「か、かあさん?」
階段の上から青ざめた顔でこちらを見る友次郎がそこにいた。
「友次郎!」
見られてしまった?
「友次郎、違うんだよ。
これは友次郎のことを思って…。
汚い虫が友次郎を惑わすから」
そう言いながら、友次郎に向かって手を伸ばす。
手にはべっとりと血のついた木槌。
きっと賢い友次郎ならわかってくれるはず。
こうして松枝がいなくなったことで、今までこの汚い虫に幻覚を見せられていたのだと気が付くはずだ。
そして、松枝を殺したこの母に感謝するのだ。
一家の質を落とすような虫ども――松枝と赤子を殺してくれてありがとう、と。
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