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ここは吉原、遊郭街。 アタシはこの街で艶やかな着物を着て、旦那様達に色を売る。 旦那様はどこぞの大名や裕福な商人たち。 金を携え、着飾った私達を物色する。 そして今宵もアタシは色を振りまき旦那様のお相手を。 今夜のお相手は―― 「友次郎様、おまっとさんでありんす」 遊郭で使われる、特有の廓言葉でアタシは旦那様に挨拶をする。 それが遊女としての作法。 「松枝、会いに来たよ」 アタシの姿を見て、名前を読んでニコッと微笑む旦那様。 この笑顔にアタシはクラクラとさせられるのだ。 彼は町の大きな薬屋の跡取り息子。 2年ほど前から、週に何度かここ遊郭でアタシを呼んでくれる。 他の旦那様とは違い、アタシに優しく紳士的に接してくれる友次郎さん。 遊女になって数年。 初めて客に恋をしていた。
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