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いつかは彼と―― そうは思うが、しかしここは遊郭。 年季が明けるか、身請けされない限り、女はこの吉原の大門から外には出られない。 ※年季が明ける…借金を完済すること ※身請け…客が身の代金を支払い、約束の年季が明ける前に稼業をやめさせること 所詮、アタシは籠の中の女。 この籠から出ることは許されない。 これからもアタシは籠の中から、外の世界へと飛び立ちたいという叶わぬ夢を見続けるのだろう。 「かーごめ かごめ かーごのなーかのとーりーは」 ふと頭に浮かんだ、子供の遊び歌を歌う。 「松枝?どうしたの?」 「いえ、なんでもござらん。 子供の頃、よぉ遊んだものと懐かしく思うただけでありんす」 「はは、僕もよく遊んだよ。 かーごめ♪かごめ♪」 友次郎さんは少年のように、楽しそうにその歌を歌った。
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