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楽しそうに歌う友次郎さんを隣で眺める今が幸せ。 ずっとこうしていたいな―― 「ねぇ松枝。 今日が何の日かわかる?」 楽しそうに歌っていた友次郎さんは突然、アタシに質問をぶつける。 「今日でありんすか?うーん」 ちょいと考えてみても何も浮かばない。 「わかりんせん。教えておくんなんし」 「そっか、わからないかぁ。ちょっと残念。 今日はね、僕と松枝が初めて出会った日だよ」 「…え?」 友次郎さんが遊女であるアタシと出会った日のことを覚えてくれている? 「ちょうど2年前の今日。 僕は友人の付き合いでしぶしぶこの遊郭に立ち寄ったんだ」 当時を懐かしみ、思い出すかのように窓の外を見やりながら友次郎さんは言葉を続けた。
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