第1章

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「あなたはこれで何戦目ですか?」 ベータローが聞くと、少し落ち込んだような調子で前の馬は答えた。 「俺はこれで6戦目。勝てないんだ。血統もあまり良くなくて、セリでは買い手がつかなかった」 ベータローは聞いてはいけないことを聞いてしまったかもしれないと少し気まずく思った。 「それでも、ここにいる俺たちは恵まれていると思う。生まれても、全てのサラブレッドがレースに出て来れるようになるわけじゃないからな」 ベータローは、その通りだと思った。自分のまわりにも、競走馬になれなかった馬はたくさんいたからだ。 「俺の名前はスターダスト。お前は?」 「ユヴェールといいます。」 ベータローの競走馬としての名前はユヴェール。自分の競走馬名を口にするのは、これがはじめてだった。 ふと、斜め上の掲示板に目をやる。 文字がたくさん並んでいて、よく意味はわからないが、スターダストのゼッケンに書いてある形の文字が掲示板の1番上に書いてある。 競馬には、人気というものがあることを、ベータローは知っていた。 スターダストは、どうも1番人気らしい。 血統がよくないと言いながらも、スターダストはなかなかの身体つきをしていた。大きくて幅のあるストライドが、いかにも今回の優勝候補らしい。 「とまーれー。騎乗~。」 掛け声と共に、馬が止められ、騎手が走ってくる。
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