第1章

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自分のもとに走ってくる騎手はどんな人間かと思っていたら、走ってきたのは小さな女の子だった。 「こんにちは!今日はよろしくお願いします!ユヴェールも、よろしくね!」 厩務員にあいさつをしてから、女の子はベータローにもあいさつをしてきた。 人懐っこい笑顔が印象的な可愛らしい女の子だ。 エクボが片方にだけある。 厩務員の補助を得て、彼女はベータローに跨った。首をポンポンとされて、よくわからないが、あばれもせずにきちんと騎手を乗せたので褒められているのだと感じた。 この子を背に乗せて走るのか。 パドックから移動した馬たちは一頭ずつ、厩務員の導きで馬場に放たれていく。 ベータローも勢いよく馬場に出ると、走りだしと共に背にいる彼女が立ち上がるのがわかった。 体が小さいのか、背中の風の抵抗がいつもより少なく感じる。 アナウンスの声が聞こえた。 2番人気はどうも自分らしい。 ゲートに近づくと、彼女が手綱を引くのがわかった。スピードを落とさなければ。 いつも騎手の指示には忠実に従っているベータローだが、この日は特に彼女の指示に気を遣っていた。 ベータローには背に乗せている女の子が、あまりに幼く見えたからだ。 「今日は涼しいね。もう10月だもんね。」 背中でつぶやくのが聞こえたが、ベータローは特に反応せず、芝をしっかり踏み締めながら、馬場の状態を確認して、レースに向けて気を引き締めていた。 ゲートの後ろの日陰で、馬たちが周回している。 そこにベータローも加わる。 「今日の1番人気はスターダスト。いつも1番人気は牡ばかり。」 不満そうな声が後ろから聞こえた。 見ると、灰色のピンク色のメンコをした馬がブツブツつぶやいていた。 「あなた、2番人気の馬ね。2番人気まで牡なんて。なんなの。わたしのことちゃんと見なさいよ。」 牝馬だからか、馬体は他と比べて小さく見えた。 それでも彼女には、小ささをカバーする何かがあると、ベータローは感じた。
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