第1章

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「この人、痴漢です!」 俺の目の前にいた頭の空っぽそうな金色の髪の毛をした 女が俺の目をみてそう叫ぶ。 「は?俺、してないし!」 「私見た」 斜め後ろのショートカットの女が鬼の首でもとったかのように 俺を見つめて言う。 まじか。 つーか。 まじでか。 噂には聞いてはいたけど、 まさか俺がはめられるとは。 正真正銘、俺はやってない。 なぜって俺はゲイだから。 なんて言ってもここにいる人間達を説得できないことくらい もう俺にもわかってる。 「駅員呼んで、交番行くぞこら!!!」 頭の空っぽそうな女が頭の空っぽそうな発言をする。 駅のホームで駅員を静かに待つ。 もう、終わりだ。 厳しい就活を終えてやっと内定がとれてこの春から 働きだしたばかりだというのに。 グッバイ。俺ライフ。 グッバイ。我が友よ。 グッバイ・・・ 「ちょっと待ってください」 振り返ると中学生と思われる女の子が 俺たちの方をじっと見ている。 「私、見ておりましたけどこの方、なにもしてはおりませんよ」 女2人の顔に明らかに動揺が走る。 「な、なに言ってんだよ!お前誰だよ! つーかなな・・私、見てたし! お前嘘ついてんじゃねーよクソガキ!」 「嘘なんてついておりません。 私、この殿方があまりにも格好のよいお方だったので この1ヶ月ずっと見ておりましたの。 今日もずっと見ておりました。正真正銘、清廉潔白です」 「は?ストーカーかよ!」 「違いますけど」 「あーもう。とりあえず皆落ち着こうか。 とりあえず君、交番に・・・」 「待ってください。お兄様、身分証をお出しになって 身分をお名乗りになってください」 「は?」 「身分をお名乗りなると警察は現行犯逮捕ができません。 さぁ、お名乗りになって」 「す、須藤聖哉。直江コーポレーションで営業やってます・・・」 「まぁ素敵!せいやさんとおっしゃるのですね! 私、国木田麗美と申します」 「君、なんでそんなこと知ってるの?」 若い警官が尋ねる。 「今はインターネットの時代。そうであそばして?」
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