忘れ得ぬ一夜

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「それで、お子さんはいつ生まれるんでしたっけ?」  生まれるって、……達哉に子どもが? 「……ええと、秋口です」  これは一体どういうことなのか。考えが追いつかなくて、再び目蓋を伏せた。 「それは……おめでとうございます、上村さん」  隣から戸惑ったような課長の声がして目を開けた。  瞬間、達哉と視線がかち合う。  なんて気まずそうな顔してるのよ。……冗談じゃない。   「上村さんも涼しい顔して意外にやるよなあ」 「え、いやあ……」  周囲の冷やかしに、まんざらでもなさそうな表情。  とてもじゃないけれど、私は冷静でいられなかった。  
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